企業

地域住民が
未来を語り合い、
お互いを高め合う場へ

高橋 正樹

株式会社気仙沼商会
代表取締役社長

正直、初めは半信半疑だった

地域の外から大卒者を採用する。正直、最初にこのお話を伺ったときは「本当にできるのか?」と思いました。大学・専門学校など進学先の少ない気仙沼市では、高卒で地元に残る若者が少なく、更に進学先卒業後もUターンで戻ってくる人材も決して多くはありません。ましてや震災直後においては、地域の外から大卒者を採用するなど夢物語のようなご提案だったと言えます。しかし、リクルートの方だけは本気でした。その熱意に触れるうちに「これは本気だ」という気持ちが湧き、「騙されたと思って挑戦してみよう」とプロジェクトへの参加を決断したのです。

当時はまちづくり構想を検討している最中でしたが、どんな事業も“人”がいなければ推進することはできませんし、「大企業の方々がこぞって気仙沼市に提案してくれる今を逃してはならない」という想いもありました。私自身、地域の企業経営者にお声がけをしましたが、首を縦に振ってくれた方も当初は半信半疑だったと思います。最終的なひと押しとなったのは、まさに地域の未来を憂う気持ち。やるからには本気で取り組まなければならない。そんな想いから助成金に頼るだけでなく、自己資金も投資してプロジェクトへの参加を決めたのです。

一企業ではなく、一地域として

プロジェクト開始当初は半信半疑だったものの、初年度から当社では4名ほどの大卒者を採用することができました。他の企業からも「内定を出した」と声があがるようになったときは、「本当に採用することができた」という驚き、喜びが全身を駆け抜けました。全員とはいかないまでも、最初の就職先として気仙沼市を選んでいただいた方のほとんどはまちに定着し、現在も当社に、地域に貢献し続けてくれています。

当社では大卒採用の経験はありましたが、他社の経営者のなかには「大卒採用は初めて」「教育や研修のプログラムはどうすればいい?」という方も大勢いらっしゃいました。このような状況のなかで採用することができたのは、リクルートのノウハウの提供、それを忠実に実行したこと、そして地域企業間で連携できたことが大きかったと思います。

都会とは違い、気仙沼市はまず「このまちで働くのもいいかもしれない」という需要をつくらなければなりません。市場ができて初めて採用することができますし、一企業ではなく一地域として手を取り合ったことが大きな追い風になったと考えています。

採用から地方創生へ

マチリクには、経営者のための勉強会も用意されています。その場では採用情報を共有するだけでなく、「こんなことに悩んでいる」「こうやって解決してはどうか」と議論を重ねることができます。私自身、人事の担当者には「採用の成功事例だけでなく、失敗事例も包み隠さず話すように」と言っていますし、当社の教育や研修のノウハウについても公開するようにしています。採用という観点ではライバルかもしれませんが、地域という観点では仲間。お互いに切磋琢磨することで、最終的に気仙沼市そのものが強くなっていけばいいと考えています。

そういう意味で言えば、現在においてマチリクは採用活動のツールのひとつですが、今後はもっと自由に地域住民が参加できる場になっていってほしい。外部から採用した人材は、このまちで働き、このまちで暮らす市民になっていきます。もはや採用という問題ではなく、地方創生の問題なのです。地域全体の働き方改革について話し合ったり、住環境について議論したり。地域住民全員がまちの行く末を語り合い、お互いを高め合う場。いつかマチリクが、そんな存在になってくれたらと期待しています。

高橋 正樹

株式会社気仙沼商会
代表取締役社長

気仙沼市出身。早稲田大学卒業。東京の企業で活躍し、20代後半で帰郷。その後、2018年で創業98年となる気仙沼商会の5代目経営者に就任した。2012年、気仙沼地域エネルギー開発株式会社を設立。同社の代表取締役社長も務める。